多読・多聴の効果を研究から読み解く

投稿者:

「英語の勉強、どうやったら上達するんだろう?」そんな悩みを抱えている方、多いのではないでしょうか。文法書を必死に覚えたり、単語帳とにらめっこしたりしているけれど、なかなか思うように話せるようにならない…。そんな時に注目されているのが「多読・多聴」という学習法です。

でも正直なところ、「本当に効果があるの?」「ただ読んだり聞いたりするだけで上達するなんて信じられない」と思う方もいるでしょう。実は私も最初はそうでした。しかし、近年の研究では多読・多聴の効果が科学的に証明されてきているんです。今回は、そんな研究データをもとに、多読・多聴の本当の効果について、初心者の方にもわかりやすく解説していきたいと思います。

多読・多聴って本当に効果あるの?研究データから見えてきた驚きの真実

まず、多読・多聴の効果について、実際の研究データを見てみましょう。2019年に発表されたメタ分析(複数の研究結果をまとめて分析する手法)では、多読を行った学習者の語彙力が、従来の学習法と比べて平均で約1.5倍向上したという結果が出ています。これは決して小さな数字ではありません。例えば、通常の学習で1年間で1000語覚えられる人が、多読を取り入れることで1500語覚えられるようになる計算です。

さらに興味深いのは、読解力の向上についてです。台湾で行われた大規模な研究では、6ヶ月間多読プログラムに参加した学習者の読解スピードが平均で40%向上したことが報告されています。これは単に速く読めるようになっただけでなく、理解度も同時に向上していることが確認されました。つまり、「速く、正確に」読めるようになったということです。実際の学習者からは「最初は児童書レベルから始めたけれど、気がついたら新聞記事もスラスラ読めるようになっていた」という声も聞かれます。

多聴についても同様に効果的な研究結果が出ています。韓国で実施された研究では、毎日30分の多聴を3ヶ月続けた学習者のリスニング能力が、TOEICスコアで平均80点向上したという報告があります。特に注目すべきは、学習者が「英語を英語のまま理解する」能力が向上したことです。従来の日本語に訳して理解する方法から、英語の音とイメージを直接結びつける能力が身についたのです。

初心者でもわかる!多読・多聴が言語習得に与える具体的なメリット

多読・多聴の最大のメリットの一つは、自然な文脈の中で語彙や表現を習得できることです。単語帳で「apple = りんご」と覚えるのと、物語の中で「She took a bite of the crisp, red apple」という文で出会うのでは、記憶への定着度が全く違います。研究によると、文脈の中で学んだ語彙は、単独で暗記した語彙と比べて3倍長く記憶に残ることが分かっています。これは、単語が感情や場面と結びついて記憶されるためです。実際に多読を続けている学習者からは「知らない単語でも、なんとなく意味が推測できるようになった」という声がよく聞かれます。

二つ目のメリットは、言語の自然なリズムやパターンを身体で覚えられることです。多聴を続けていると、英語特有のイントネーションやストレス、音の変化などが自然と身につきます。これは「プロソディ(韻律)」と呼ばれる言語の音楽的な要素で、実はコミュニケーションにおいて非常に重要な役割を果たしています。例えば、同じ「Really?」でも、上がり調子で言えば驚き、下がり調子で言えば疑いを表現できます。多聴により、こうした微妙なニュアンスも自然と習得できるのです。

三つ目のメリットは、学習に対するモチベーションの向上です。従来の文法中心の学習と異なり、多読・多聴では「楽しみながら学べる」という特徴があります。好きな小説やポッドキャストを教材にできるため、学習が苦痛ではなく娯楽の一部になります。心理学の研究では、内発的動機(自分から進んでやりたいと思う気持ち)に基づく学習の方が、外発的動機(やらされている感じ)による学習よりも効果が高いことが証明されています。「気がついたら2時間も英語の本を読んでいた」「お気に入りのYouTuberの動画を見ているうちに英語が聞き取れるようになった」といった体験談は、この内発的動機の力を物語っています。

効果を最大化するための多読・多聴のコツ

多読・多聴の効果を最大化するためには、適切なレベル選択が重要です。研究では「i+1理論」(現在のレベルより少しだけ難しいレベル)が最も効果的とされていますが、多読・多聴においては「i-1」(現在のレベルより少し易しいレベル)から始めることが推奨されています。具体的には、知らない単語が全体の2-5%程度の教材が理想的です。例えば、100語中2-5語程度の知らない単語があるレベルということです。これにより、ストレスを感じることなく大量のインプットが可能になります。

継続のための工夫も重要な要素です。研究では、毎日短時間でも続けることが、週末にまとめて長時間行うよりも効果的であることが分かっています。「15分ルール」として、毎日最低15分は多読または多聴を行うことから始めましょう。また、記録をつけることも効果的です。読んだページ数や聞いた時間を記録することで、自分の成長が可視化され、モチベーション維持につながります。スマートフォンのアプリを使って簡単に記録できる方法もたくさんあります。

量と質のバランスも考慮すべきポイントです。多読・多聴では「量」が重視されがちですが、時には「質」も大切にする必要があります。具体的には、特に気に入った作品については、一度読んだり聞いたりした後に、もう一度じっくりと味わってみることです。二回目は細かい表現や語彙に注目できるため、より深い理解が得られます。また、シャドーイング(聞こえた音声をそのまま真似して発話する練習)を組み合わせることで、リスニング力だけでなくスピーキング力の向上も期待できます。

いかがでしたか?多読・多聴の効果について、研究データをもとに詳しく見てきました。単なる「たくさん読んで聞く」という単純な方法に見えるかもしれませんが、実は科学的な根拠に基づいた非常に効果的な学習法なんです。

大切なのは、完璧を求めすぎず、楽しみながら続けることです。最初は児童書やアニメから始めても全く問題ありません。私の知り合いの中には、ハリー・ポッターの英語版から多読を始めて、今では英語でビジネス書を読みこなしている人もいます。また、好きな海外ドラマを字幕なしで見ることから多聴を始めて、今では英語でプレゼンテーションができるようになった人もいます。

あなたも今日から、お気に入りの一冊や一つのポッドキャストを見つけて、多読・多聴の旅を始めてみませんか?きっと半年後、一年後の自分の成長に驚くことになるはずです。言語習得に魔法はありませんが、多読・多聴は科学に裏打ちされた「魔法に近い」学習法かもしれませんね。